2018年一発目ということで、自宅で映画を観たわけですが「何で新年一発目にこの映画をチョイスしちゃったんだろう‥‥‥。」とちょいとばかし後悔するような、恐ろしい作品を観てしまいました。それがこちらの作品。
この『凶悪』という作品は、ノンフィクション小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』を基にした実写映画です。今回はこの『凶悪』という映画を観た感想を中心にブログを書いていこうと思います。
最初に言っておきたいのは、この映画は実際に起きた殺人事件を基にした作品なので、描写が非常に生々しく残酷なシーンも多いです。そういう映画が苦手という人にはあまりおススメはしません(*_*;
※ネタバレもあります。
あらすじ
物語は週刊誌宛に届いた一通の手紙から始まります。差出人は元暴力団の組員で現在拘置所に収監されている須藤。須藤はピエール瀧さんが演じてます。
山田孝之さん演じる週刊誌の記者藤井は、上司からの命令でこの須藤と面会をしてくるように言われます。拘置所に須藤と面会する藤井。そこで彼はこの死刑囚から恐るべき事実を聞かされるのです。
「どうしても許せない奴がシャバにいる」
「自分には誰にも話していない余罪が3件ある」
須藤からの告白について慎重に質問を重ねる藤井。須藤によると一人目は焼却炉で燃やし、生き埋めにしたのが二人目、三人目が保険金をかけて殺したとのこと。ただしこれらの事件の首謀者は自分ではない、それは自分が「先生」と呼んでいた男であると須藤は告発をするんですね。ちなみにこの先生はリリー・フランキーさんが演じています。
須藤は先生だけがのうのうとシャバにいるのが許せない、告発した内容を記事にしてもらって先生を追いつめたいと藤井に告げるのでした。
「死刑囚による余罪告発」
前例がない状況ではありましたが、藤井の上司は「スクープにならないから」と適当な理由をつけて断ってくるよう藤井に言いつけます。そんなわけでいったんは須藤の依頼を断ろうとした藤井。ところが、須藤との二度目の面会時に事件のことや、「一度は先生と慕っていた人間をなぜ憎むようになったのか」その理由を聞いたことで、事件のことが気になりはじめ上司には許可を得ず独自に調査を始めます。
そして調査が進むにつれ須藤や先生が起こした数々の凶悪事件の全貌が徐々に明らかになってくるのです。
凶悪な人間たちが怖すぎる‥‥‥。
タイトル通り本作には「凶悪」な人たちが多数登場します。
特に恐ろしいのはピエール瀧さんの演じる元暴力団組員須藤と、その須藤が慕っていたリリーフランキーさん演じる「先生」こと木村です。
須藤は暴力をふるうことに対して一切抵抗がない男で粗暴そのもの、人を傷つけ殺すことに対して全く躊躇がありません。先生は他人の土地を売却して金を手に入れるために土地の所有者を消すよう須藤に頼むんだけど、まるでお使いでも頼まれるかのように軽く引き受けて実行してしまうんですよね。
他人の命をものすごーく軽く扱う須藤という人間の残酷さ、暴力性をピエール瀧さんがすごい迫力で演じてます。
「マジでこんな人間と絶対に関わりたくない‥‥‥。」
画面越しにそう思わされてしまうほど須藤という男の凶悪ぶりはすさまじく、印象に残ります。ほんとに恐ろしい‥‥‥。
一方須藤とは違う凶悪さを持ち合わせていたのが先生こと木村です。木村は不動産ブローカー、つまり土地を転売してお金を儲けている男。ただしそのやり方が悪そのもの。その手口は須藤に土地の所有者を消させて得た土地を転売したり、借金で首が回らない男に保険金をかけて事故死に見せかけて殺したりと、頭を使いつつ他人の命と金を奪い取る人間です。
その際に同情は一切なし。保険金をかけられこれから殺されようとしている老人が苦悶の表情を浮かべ「助けてください‥‥‥。」と命乞いをしても「あっ?知らねぇよ。」と意に介さず。むしろその苦しんでる様子に興奮すら覚えゲラゲラと笑いながら大量の酒を飲ませて弱らせていく。演技とはいえリリーフランキーさんの表情は悪人そのもので、ゾッとしてしまいました。
須藤を演じたピエール瀧さん、そして先生こと木村を演じたリリーフランキーさん。この2人の凶悪そのものの人間を演じた姿を見るだけでも本作は観る価値があるんじゃないかな?まぁ、物語は残酷そのもので目をそむけたくなる人も多いとは思いますが。
誰もが「凶悪」になる可能性があるのかもしれない‥‥‥。
今作では須藤と木村の凶悪性が特に印象に残りますが、その一方で「人間にはみな凶悪な一面があるんじゃないか?」というのがこの作品を観ていて改めて感じたことです。
例えば保険金をかけられ殺されたおじいさんの家族。この家族は木村との話し合いで、おじいさんを酒の飲み過ぎによる事故に見せかけて殺し保険金を得ることで借金返済をするということになっています。借金返済のために家族の殺害を依頼しているわけで、この時点で結構悪いわけです。ただここから人が凶悪に変わる瞬間を目にすることになります。
おじいさんは殺害される直前まで「死にたくない‥‥‥。家に帰りたい」と訴えていました。その訴えを聞いた木村は家族に電話をかけて「酒飲ましていいの?どーすんの?」と問いかけるんですね。その電話を受け取ったおばあさん、つまりおじいさんの妻は木村の問いかけに対してこう答えるんです。
「もっと飲ませてください。」
そういい放って電話を切った後に家族とともに淡々と食事をするシーンにゾッとしていしまいましたね。おそらく彼らはお金のことさえなければ普通の家族だったのでしょう。ただ、多額の借金を抱えたことで彼らは変わってしまった。須藤や木村のようなわかりやすい残酷性はないけど、実の家族の命を金のためとはいえ簡単に切り捨ててしまう彼らの中にも人間の「凶悪」な部分を見たような気がします。
まとめ
というわけで、今回は『凶悪』という映画を見た感想を中心に書いてみました。
本作では人間の凶悪な部分を痛いほど見せつけられる作品です。劇中ほとんどがそういう感じなので、正直目をそむけたくなる人もいるだろうし、「うわっ、もうみたくもない。」と拒否反応を示す人もいるかもしれない。かなり心をかき乱される作品であることは間違いないでしょう。
正直楽しんでみる作品ではないかもしれませんが、人の裏の顔、社会の闇の部分を知るという点においてはとてもすぐれた作品だと思います。
また、先述したようにピエール瀧さんやリリー・フランキーさんの演技の恐ろしさですね。その辺りもこの作品の凶悪性を高めていると思うので、ぜひそういった部分に注目してみてください。
「マジで人間恐ろしい‥‥‥。」
それでは今回はこの辺で失礼します!