結構前になりますが、たまたま試写会に当選したので『THE RECEPTIONIST(ザ・レセプショニスト)』という作品を観てきました。
今回はこの作品のあらすじや、実際に作品を観て思ったことを書いていきたいと思います。
ザ・レセプショニストのあらすじ、感想
あらすじ
まずは簡単なあらすじから。
舞台はロンドンにある不法風俗マッサージ店。住宅街の一軒家で届け出も出さずにひっそりと営業中。そこではマレーシアや台湾などアジア出身の女性たちが各々の事情を抱えながらセックスワーカーとして働いています。
主人公のティナは大学を卒業したばかりの台湾人でイギリス人の恋人と同棲中。彼女は職を探すもなかなか採用されずにマッサージ店で受け付け嬢として働くことになります。
本作はそんなティナの生活を通じて、想像以上に過酷で厳しく立場が弱い移民たちの生活の困難さを映し出しています。
違法な仕事に就くものは誰にも助けを求められないという現実を知る
まずこの映画を見ていて一番印象に残ったのは、違法な店で働くと誰も守ってくれないってことです。
主人公ティナが働くマッサージ店は違法なためそもそもちゃんと届け出をしていません。店のオーナーであるリリーは家の貸主である大家にも嘘をつきこっそりとマッサージ店をやっています。なので店舗も周りからパッと見てもわからないような一軒家なんですよね。もちろん看板もないので、はじめての客は直接店に電話をかけて口頭で道案内をしてもらって店に来ます。
隣にも普通に住人がいるので、営業していることや人の出入りしている気配も悟られないようになるべく声もひそめて、中もすごくうす暗ーい感じになってるんですよね。違法な立場の人間は日陰でひっそりと過ごさざるを得ないわけです。
客とトラブルがあっても警察に頼れないし、地元の人たちにも頼れない。なぜなら通報すれば自分たちが摘発されてしまうから。なので自分の身は自分で守らなければならない。でも、弱い立場の彼女たちがそれを徹底するのはものすごくハードルが高いわけです。
実際、本作でも女性たちが客の男たちが欲望に身を任せて犯罪すれすれというか、普通に犯罪といってもいいぐらいのひどい目にあわされたりします。それでも、彼女たちは助けを呼べないし耐え忍ぶしかない。
もちろん違法な店で働く彼女たちにも責任はあります。ただ、現実問題として彼女たちにはそもそも仕事がなかったり、あったとしても低賃金の仕事しか与えられません。中には子供を抱えていたり、母国にいる家族に送金をしなければならなかったりするわけです。となるとそうした仕事ではどうしてもお金が足りなくなってしまう。そんな彼女たちが何の資格も学歴も必要なく体一つあれば稼ぐことができるセックスワーカーの仕事に就くのは合理的と言えば合理的なのかもしれません。(もちろん違法なのでダメなんだけど)
決して明るい映画ではないが、移民や外国で働く異国の人たちについて考えるきっかけになる
これまでザーッと読んでもらってわかるように、本作は移民の厳しい現実を見せつけられるため家族とカップルで楽しみながら観るよう内容でもありません。
ただ、これから日本も人手不足だなんだでさらに海外から人を入れようとしています。政府は海外から人を受け入れる際に、ポジティブな要素を前面に押し出しますが、その裏では本作の女性たちのように違法な労働に従事ざるを得なかったり、あるいは望まない過酷な環境に身を置く可能性があるということもあるわけです。そうした裏の部分、かならずしもポジティブなことばかりではないということを気づかせてくれる作品なのではないかと思っています。
映画の内容からして大ヒットはしないでしょうが、移民のネガティブな側面を伝えてくれる現実的でいい作品でした。興味がある方は是非ご覧になってみてください。