先日紹介した中川学さんの『探さないでください』という作品があります。
この作品は、著者の中川さんが、あまりにしんどくて勤めていた中学や家族に何も言わずに失踪した時の出来事を振り返るというものです。
中川さんはこの失踪劇によって、仕事を失い周りの人にもものすごい心配され、多大な迷惑をかけるわけです。きっと、この作品を読む人の中には「逃げるなんてありえない。周りに迷惑かけまくりじゃん!」と中川さんの行動に憤りを覚える人もいると思うんですよね。
なんだかんだで、社会は逃げる人とか逃げた人に対して冷たい気がするし、逃げる=負けという考えもまだまだ根深いので無理もないことなのかもしれません。
ただ、僕個人の考えとしては「辛くてしんどくてどうしようもなくなったら逃げてもいい」と思っていて、決して逃げることを否定はしたくないんですよね。むしろ、時に逃げることが正解とまではいわないまでもベターな選択肢であったりするわけです。
でね、この中川さんも確かに一度は仕事からも家族からも逃げて疾走するわけですが、結果的には実家に戻りもう一度人生について考えることになるんですよね。
その結果、自分のやりたいことについて改めて考えることができ、おぼろげながらも進みたい道が見えてくるようになるんですね。そう考えると逃げることって悪いことじゃないなと、逃げていったん自分を見つめ直すことで見えてくるものもあるんじゃないかと思うんですよね。
逃げて自分を見つめ直せ!!
中川さんの場合は失踪から無事に生還?後、改めて「自分は何がやりたいのか?」を真剣に考えることになります。
教師はもう難しい、かといってサラリーマンも‥‥‥。で彼は「自分が好きなのは映画だ」ということを思い出すわけです。
とはいえ、映画をつくるにはお金がかかるし、色々な人とコミュニケーションもとらなければならず、自分には難しそう。
で、そんな時彼の目についたのが漫画だったんです。漫画なら映画をつくる時のようにたくさんの人とコミュニケーションをとらなくていいし、シンプルに紙とペンだけあればつくることができます。
とはいえ、中川さんは漫画をずーっと描いてきたわけでもないし、絵がメチャメチャうまいというわけでもありません。やっと自分の進むべき道を見つけたかと思いきや、彼はここで悩んでしまうわけです。
そんな悩みを抱えていた時に、彼はウェブで吉本隆明さんという人が語ったこんな言葉に出会います。
「あるひとつのことに関してこうやれば食えるようになる」ということの平均値が
おそらく10年なんです
10年間毎日ずうっとやってもしそれでモノにならなかったら 俺の首やるよ
引用元:『探さないでください』p150
中川さんはこの言葉を胸に、それからバイトが忙しくても疲れていてもとにかく漫画に関わることを毎日始めるわけです。具体的には4コマ漫画を描いたり、デッサンを描いたりとかを続けるんですね。
じゃあ、これね、中川さんがそのまま教師を続けていたら思いついたかといったら、たぶん難しかったんじゃないかと思うんですよね。
毎日の業務に忙殺されていただろうし、メンタルもやられてしまっていておそらく「自分のやりたいことって何だっけ?」と考えることができなかったと思うんですよね。自分を見つめ直すってある程度精神的にも時間的にも余裕が必要な作業なので。
そう考えると、中川さんが教師をやめたという選択は正解だったんじゃないかなと個人的には思うんですよね。
もちろんね、これは失踪という形をとらなくても良かったとは思いますよ。普通に学校に「辞めます」といって辞めてそのまんま実家に帰ってくればよかった。そうすれば周囲に余計な心配をかけることはなかったわけですからね。
でも、人間追い込まれたら冷静な判断なんてできないもんじゃないですか?作品を読む限り中川さんは失踪当時のことをけっこうおもしろく描いてはいるけど、でも相当追い込まれていたんだなっていう描写もちょこちょこあるわけです。
なので、僕としては時には逃げて体勢を立て直し、改めて自分のことを見つめ直すことがあってもいいじゃないかと思うんですね。逃げずにつぶれて、やりたいことを考えるどころかメンタルやられてしまったらその方が大変ですから。
「逃げていったん体勢を立て直す。そして改めて自分を見つめ直して方向性を決める」
それをやれれば逃げることも悪いことじゃない。むしろ、ポジティブな選択だったと思えるんじゃないかな?
そんなことをこの『探さないでください』を読みながら思いました。
まとめ
そんなわけで今回は中川学さんの『探さないでください』から、逃げることで自分を見つめ直せばいいという考え方を学んでみました。
逃げることは決して悪いことじゃない。むしろ、逃げたからこそできることもある。そういうポジティブな考えになれたら、逃げることは人生を良くしてくれる、そんな風に思っています♪
それでは今回はこの辺で。