『岳』という作品をご存知でしょうか?小栗旬主演で映画化されてもいるので、ご存知の方もいる方と思います。岳というタイトル通り山を舞台にした山岳救助について取り扱った作品です。
僕はこの作品について、山に関連したものであるということと、だいぶ前に映画になってたっていうことぐらいしか覚えてなくて、「ふーん、そういう作品もあるのか」ぐらいの感覚だったんですね。
ところが、ここ最近たまたま1話から読む機会がありまして、読み始めたら「これ面白いじゃん!!」となりまして、紹介するっきゃねぇということで今回この記事を書いている次第でございます。
というわけで、今回はこの『岳 みんなの山』という作品について紹介していきたいと思います。
岳 みんなの山のあらすじ、感想
あらすじ
まずは、ざっくりとしたあらすじを。主人公は山岳遭難防止対策協会というところに所属する島崎三歩(しまざきさんぼ)です。彼は元々アメリカで山岳救助の経験を積んでいたのですが、日本に戻りボランティアの救助隊員として活動をしています。
本作はその三歩や三歩のもとで訓練を受ける新人の新名久美の活躍を通じて、大自然の厳しさや、山岳救助の過酷さを描いた作品になっています。
山の怖さ、自然の猛威を読者に刻み付けてくれる作品
僕がこの作品を読んでいてまず第一に思ったのは、「ちゃんと人が死ぬんだな」というところでした。
こういう作品でたまにあるのが、すごい卓越したスキルを持った主人公が絶望的な状況の中で、奇跡のような救出劇を演じ結果的にメデタシメデタシ・・・みたいなね。そうなったらなんか冷めるよなーというか、それ嘘じゃね?って思ってしまっていただろうと。
ところが、この『岳』という作品にはそうした、「必ず救出されてよかったね」という予定調和な終わり方はあんまりありません。もちろん、三歩たちのおかげで助かる命も多々ありますが、その一方で雪山のあまりに過酷すぎる環境で命を落とす人たちがそれこそ毎回のように登場します。
雪崩に飲み込まれて助かったもの、逆に一緒に飲み込まれて救われなかったもの。途中まで意識はあったけど、救助の途中で力尽きたものなどなど、老若男女関係なく山はあっけなく命を飲み込んでいく。
その厳しさ、うそ偽りのない過酷さ、無慈悲さというのをしっかり描いているのが個人的にはすごい好感持てたというか、読みごたえがあるなぁと思いました。この辺は子供の時だったら目を背けてしまったのかもしれないけど、いい意味で僕が大人になったからなのかもしれません。
まぁ、きっと合理的な人からすると「なんでそんな危険な山に登るんだ」って話なんでしょうし、僕もそう思わないでもないけど、それでも登りたくなるのが山なんだと。でも、そんな人間の情緒とか思い出なんてものを一切顧みてくれない山や自然の恐ろしさというものをこの作品は思い出させてくれます。
主人公三歩のでかさに思わず感心してしまう
個人的には主人公三歩の人柄がいいです。彼は世界各国の山を登り山岳救助の経験のスキルも高く経験も豊富です。当然だけど、救ってきた命もあるし救えなかった命もある。同僚が死んでしまった経験もしている。
そんな三歩は、なんていうのかな人の生き死にでイチイチ動揺しないというのかな。いやっ、動揺するのが悪いっていうわけじゃないし、動揺するのが当たり前なんだけど、彼の場合それすら受け入れてしまっている。達観してると言ったらいいのかな、そういう感じで漫画のキャラクターではあるんだけど、その言葉とか姿勢には「この人すげぇな………」って思わず口にしてしまう感じというか。
ほらっ、たまにあるじゃないですか。「この域にはとてもいけないよな」っていうレベルの人がいること。そういう人にはただただ感心するしかないんだけど、三歩もそういう域に達してるように思いました。漫画のキャラではあるけど、思わず感心してしまったキャラは久々だったように思います。
どんな人向け?
本作はこんな人におすすめだと思います。
- 山岳救助隊の活動に興味がある
- 登山や山に登るのが好き
- リアルな人間ドラマを見たい
どちらかというと、大人向けの漫画かなぁと。ただ、山にあこがれる子供さんとかに見せると「山って美しいばかりじゃないんだよ」というのを読みながら学べるのでいいのかもしれません。
まとめ
というわけで、今回は『岳 みんなの山』の感想を書いてみました。
いやぁ、個人的にはもうちょい早く読んでおけばよかったなと。久々にぐいぐい引き込まれてしまった作品でした。
お話自体は人が遭難して救助するというある程度決まったパターンではありますが、飽きずに読める作品だと思います。興味がある方は是非一度ご覧になってみてください。