漫画の神様といえば手塚治虫先生を思い浮かべる方も多いかと思います。
手塚先生は既に亡くなっているため、先生の新作を読むことはかないませんが、先生の作品に対する批評や、ぶっ飛んだ先生自身を批評した本も多く出版されています。
今回僕が読んだ、『未来を予告していた黒い手塚治虫』という本もそんな手塚先生とその作品について批評した一冊です。
この本どういった内容とかというと、手塚先生の様々な作品を
- 第1章 人類の最後
- 第2章 暴走する権力
- 第3章 蝕まれる自然
- 第4章 心に棲む悪魔
- 第5章 異形の美少女たち
- 第6章 ピカレスクの系譜
- 第7章 平凡な日常に潜む悪夢
- 第8章 お化けと妖怪たちがいる場所
- 第9章 未知の病魔と命の不思議
- 第10章 個人の人生を狂わせる戦争
という10個の項目に当てはめて、「手塚治虫先生はこんな作品も書いてる、こんなテーマも取り扱っている」ということをひたすら紹介しているものです。
ぶっちゃけたことを言えば、内容自体は各作品のあらすじの部分が多くて、「これなら実際に作品を読んだ方がいいかなぁ」と思ったりもします。まぁ、僕も含めて多くの人が作品を知らなかったり、読んだことがなかったりするから志方がないのもしれない。ただ、もちろんこの本を読んで改めて気づいたこともあるわけです。それは、「手塚治虫先生の学習意欲と想像力のすごさ」です。
手塚治虫の学習意欲と想像力は素晴らしい!!
手塚治虫先生の作品は、短編や短期間で終わった作品も含め全604作あるそうです。(手塚治虫の作品一覧 - Wikipediaより)
全604作‥‥‥。すげぇ。僕は手塚先生の作品についてはブラックジャックや、火の鳥といった代表的な作品しか知らないので、せいぜい先生の全作品の1~2%ぐらいしか読んでないってことか。
でね、先生の作品っていうのを読んでみると、まぁびっくりするぐらいジャンルとかテーマの縛りがないんですよ。
医療、歴史、妖怪、戦争、病気、権力闘争、宇宙、自然などなど、もう描いてないものはないんじゃないかってぐらいに網羅されてるんです。もちろん、中にはあまり評価されずに短命に終わってしまった作品もあるとは思いますが。
また当時の漫画家と今の漫画家では創作スタイルも違います。昔の漫画家さんはかなりたくさんの作品を描いた人が多いのですからね。まぁでも、とにもかくにも、一人の人間がこれだけ多種多様の作品を生み続けたというのは驚異的だと思うわけです。
ちなみにですが、あなたの中でもし好きな漫画家の先生とかいたら、その人の作品を思い返してみてください。その先生の代表作のジャンルってせいぜい1~3つぐらいじゃありません?一方手塚先生はというと、メチャメチャ有名な作品だけでもジャンルやテーマがほとんど被っていません。
【勝手に選んだ手塚先生の代表作】
- 鉄腕アトム(ロボット、テクノロジー)
- ブラックジャック(医療)
- 火の鳥(歴史、SF)
- ブッダ(宗教)
- ジャングル大帝(自然、動物)
- どろろ(妖怪)
- リボンの騎士(少女漫画、ファンタジー)
代表作は僕が勝手に選んだのでご了承ください。まぁ、でも↑に挙げた作品はタイトルぐらいであればある程度多くの人が知っている作品かなと思います。これだけ見ても、手塚先生って本当に色々なものに興味を持って、貪欲に学んでいたんだなってことがわかりますよね。そして、それらの知識に自分の想像力を加味して、様々な作品を生み出していった。先生の脳みその中どうなってたんでしょうね?パカッと開けて中を覗いてみたいぐらいです。はぁ、脱帽ですわ。
また、今回紹介した『未来を予告していた黒い手塚治虫: 本当はエロチックで残虐な「黒手塚マンガ」のストーリー』でも言及されていますが、手塚先生の作品というのは一つの作品の中に、SFやテクノロジー、歴史など様々な要素が盛り込まれていたりするんですね。
手塚先生の代表作の一つに『火の鳥』を例に挙げてみます。この作品の過去から未来にかけて地球の歴史を描いていくかなり読み応えのある作品です。(実際に読んでみて)さまざまな時代について描くだけでも、その当時の文化や人々の生活などをかなり勉強しなければならないことがわかります。
でね、この作品の中に未来の世界を描いた「未来編」があります。この話の舞台は西暦3404年です。ここで描かれる世界では巨大なコンピューターが世界を支配していました。人間はその機械に従うような立場になっています。これはつまり、「AIが世界を席巻した世界」を描いているわけです。
今から五〇年前に、手塚が私たちが現在直面している「AI(人工知能)革命」という現実を先取りしていることに驚かされます。
引用元:『未来を予告していた黒い手塚治虫: 本当はエロチックで残虐な「黒手塚マンガ」のストーリー』p24 著者 中野 晴行 徳間書店
今でこそ、AIが云々という話はあちこちでききますけど、手塚先生が火の鳥の未来編を描いたのは、1967年から68年のことです。つまり、いまから50年前にすでに先生は、人工知能によって支配された世界のことを想像して、それを作品として残しているわけです。すごくない!?
50年も前のことですよ!!その時の日本で、人工知能のことを考えた人なんてどれだけいたでしょうか?ましてや手塚先生は科学者でもないわけです。にも、関わらずそういう世界を描けてしまう。おそらく、相当テクノロジー関連のことも勉強したのでしょう。
もちろん、手塚先生が描いた未来が正解かどうかなんてわからないわけですけどね。でも、多くの人は想像すらできないわけですから、やっぱり発想力がすさまじいですよね。
っていうか、手塚先生あんだけ日々原稿の締め切りに追われていたのに、どこにそんなことを勉強する時間があったんだろうか‥‥‥きっと、睡眠時間を極限まで削っていたんでしょう。何せよ、その漫画に対する執念と言いますか、狂気というのはほんと真似できないし、ただただ尊敬しかありませんよね。僕なら3日でダウンしてます(笑)
手塚先生の作品を読んだ事がない人は、ぜひ手塚作品を読もう!!
まぁ、こんな感じでとにもかくにも手塚先生の学習意欲のすさまじさと想像力の豊かさというのは、この本を読んでいて改めて感じたことかな。今の若い人なんかもしかしたら「手塚治虫の作品を読んだことすらない」っていう人もいると思うから、こういう本をとっかかりにして先生の代表作とか気になる作品を何作か読んでみるといいと思います。
絵柄とかはもちろん今風ではないけども、話自体のおもしろさ、扱うテーマの多彩さ、想像力あふれるストーリー展開、人間にとって不変的なテーマの追及などなど、多分時代とか年代問わず楽しめるはずです。僕も時々ブラックジャックとか読み返しますが、今でも読み出すとハマりますからね。やっぱり、面白い!!
もし最近読むマンガないなーっていう人は、ぜひ手塚漫画を選択肢に入れてみてください!!
ちなみに手塚先生のぶっ飛んだエピソードが満載の『ブラックジャック創作秘話』という作品は、メチャメチャ面白いので、手塚先生についてもっと知りたいぜ!!っていう人はそっちも読んでみることをおすすめします(^^)