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『さよならタマちゃん』読めば泣ける、そして勇気を与えられる作品

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「読んでいたら自然と泣いてしまった。」

 

時々そんな作品に出会うことがあります。

 

今回紹介する『さよならタマちゃん』という作品も読み進めながら自然と涙を流していた作品でした。

 

この作品は作者の武田一義さんが精巣腫瘍(ガン)を患い、片方の睾丸を摘出し、その後入院をしながら抗がん剤治療をした時の闘病記です。

 

ガンを経験したものにしかわからない、リアルな闘病生活を描いている

筆者の武田さん自身の闘病記なので、ガンとの闘いの日々の出来事や、その時の感情などがとても事細かに描かれています。

 

抗がん剤の副作用による吐き気との闘い、仕事を失うかもしれない不安感、命を失うかもしれない不安感など、がんになったことがない僕にもその大変さ、苦しさ、焦燥感などがものすごく伝わってくるんですね。ガンとの闘いは予想以上に大変なんだとこの作品を読んで改めて実感しました。

 

特に抗がん剤の副作用ですぐに吐いてしまう様子は本当に辛そうでしたね。一番つらい時には食事の匂いや、他人の体臭、雑誌のインクの匂いなどをかいだだけでも吐き気をもよおしてしまっていて、「自分ならこの苦しみに耐えられるだろうか?」なんてことを想像しました。ガン患者さんは毎日のようにこの苦しみと向き合わなければならないのだと思うと、ほんとに読んでいて辛いと思うことも。

 

そんな肉体的にだけではなく精神的にも非常にしんどい、むしろ精神の方が先にやられちゃうかもしれない、そんな日々を闘い抜いた武田さんの姿には読みながらとても勇気をもらいました。ほんとに凄いです。

 

人の暖かさを実感できる作品

ガンとの壮絶な闘いを乗り切った武田さんも素晴らしいですが、その周りにいた方々の存在も闘病生活の大きな支えになったと思います。

 

なんといってもまずは武田さんの奥さんの存在ですね。闘病中、心身共に浮き沈みがあった武田さんですが、奥さんのサポート、ちょっとした気遣いの言葉などが要所要所で武田さんの支えになっていたように思います。

 

ガンとの闘いはつらいことだらけだろうけど、こういう人がそばにいてくれたらそのつらさも少し和らぐんだろうなぁ、なんてことを読みながら思いました。奥さんの優しさが身に沁みる。いい奥さんがそばにいてくれたことは武田さんにとって不幸中の幸いだったのかもしれませんね。一人だったら精神的に相当きつかったはず。

 

また個人的には武田さんがアシスタントをされていた漫画家さんとのエピソードにはウルッときちゃいましたね。

 

武田さんは入院するにあたり、アシスタント先の漫画家の先生に迷惑をかけちゃうからということで「代わりのアシスタントを雇ってください。」と伝えてあったんです。そうなればふつうは他のアシスタントを雇いますよね。だって人が減れば確実に漫画の仕上がりは遅くなるし、他のアシスタントの人たちの負担も増えるはずですから。実際にちょこちょこ弊害も出ていたんです。

 

ところがこの漫画家さんはアシスタントの人たちと武田さんの病院に来て、なんと武田さんが復帰するのを待つということを伝えるんですね。アシスタントのみんなとも話をして武田さんを待つことに決めたから新しい人を雇うのは止めると。

 

いやー、これはなかなかできないですよね。いつ帰ってくるかもわからないアシスタントの復帰を信じて待つ。だから新しい人は雇わない。すげぇなって素直に思いました。そんでこの時に先生が武田さんに言った言葉がすんげぇカッコいいんだな。

 

迷惑かけたくない

気持ちも

分かりますけど

病気なんだから

それはあきらめませんか

引用元:さよならタマちゃん (イブニングKC)p88

 

「先生かっこよすぎ!!」

 

武田さん自身、病気の状態で戻る職場までなくなってしまうという状況はやっぱりキツイって思ってたんですね。でも、自分は病気だし復帰もいつになるかわからないから、新しいアシスタントが雇われてしまうのも仕方がないだろうと思っていたし、覚悟もしてはいたんです。待っていてもらうのは迷惑だろうと。

 

そんなところに先生のこの言葉ですよ。先生は武田さんの優しい性格を把握してたんでしょう。僕が武田さんの立場だったらここで号泣してます。それぐらい超ありがたい言葉ですよね。いやぁ、ほんと先生もアシスタント仲間の人たちもあったけぇなぁ。(ちなみに僕は今この場面を読み返しながらウルっときております(笑))

 

ガン患者の厳しい現実を突きつけられる場面も

もちろんガンとの闘いは感動的なエピソードばかりではありません。時には厳しい現実を突き付けられることも。

 

武田さんは同じくガンと闘う人たちと数人と同じ病室で過ごしていました。武田さんが入院する前からいる人たち、武田さんの後に入院してきた人たち、みんなそれぞれガンと闘っています。

 

中には病状が軽い人もいて、武田さんより後に入院して武田さんよりも早く退院するなんて人がいる一方、治療が長引いたり、治ったと思ったガンが再発してしまったり、亡くなってしまう人もいるんです。

 

その中でも本作の最終話で出てくる武田さんと同室だった、田原さんと桜木さんという方のエピソードはガンという病気の恐ろしさを僕たちに教えてくれます。

 

二人がどうなるのかは、ここでは具体的には言いません。ただガンとの闘いというのは本当に厳しいんだなというのを実感させられます。その辺はぜひ実際に本作を読んでみてほしいです。僕はすごく胸が締め付けられるような思いをしました。

 

また厳しい現実は武田さん自身にも襲い掛かります。ガンは治った武田さんですが、抗がん剤治療によって手足の痛みやしびれ、感覚の鈍麻という漫画を描くものにとっては致命的ともいえる後遺症に悩まされることになってしまうんです。

 

この残酷な現実は僕が想像もできないぐらい武田さんのことを苦しめたでしょう。漫画家にとって手の感覚に影響が出るというのは無視できるものではありません。実際、最初はペンも握れず、やっとペンを握ったとしてもまっすぐ線が引けないという状態に陥ります。

 

「僕ならもしかしたら絶望してしまうかもしれない‥‥‥。」

 

読みながらそう思ったのですが、武田さんはすごいです。ここでとても力強い言葉を記してくれてます。

 

命の代わりに失くしたものは たいして重要なものじゃない

僕は生きてる

何度でも

どこからでも

やり直せる

引用元:さよならタマちゃん (イブニングKC)

 

この言葉どおり武田さんは後遺症とも向き合いながらこの『さよならタマちゃん』という作品をつくったわけですからね。ほんとにすごい人だと改めて思いました。生きていれば何度でもやり直せる、これほど説得力のある言葉はないですね。

 

まとめ

ここで最終話の最後のページに書かれていた武田さんの言葉を引用させてもらいます。

 

35歳のこの年

思いもよらぬ病に見舞われた

そして出会った

感情のこと

この一年間のすべてを

僕は生涯忘れない

引用元:さよならタマちゃん (イブニングKC)p252

 

この文章がまさにこの作品を表していますね。

 

本作はガンとの闘い、人との出会いと別れ、命のこと、そこで味わった感情がギューッと凝縮された武田一義という漫画家の渾身の一作です。

 

いいことばかりではない現実が確かにあって、でもその現実に立ち向かう勇気を与えてくれる作品だと僕は思います。自分も頑張ろう、そんな風に思わせてくれます。人の優しさ、暖かさそんなことに気づかせてくれてもくれるでしょう。

 

今闘病中の方も、そうでない方も、どんな立場の方も読めばきっと心を揺さぶられる、きっと何か感じるものがあるそんな作品です。個人的にとてもおすすめの作品なのでぜひ一度読んでみてください♪

 

武田先生の他の作品もこれからチェックしていこうと思います♪

 

それではまた!!